消防車は狭い路地でも入るけど、救急車は入れない理由

若手女性町会長、消防署に陳情に行くの巻

今回のコラムは前野芽理が書いています。

町会地内への緊急車両の侵入に係る要望

先日、町会長として、元民生委員さんと一緒に消防署(地域の出張所)に出かけてまいりました。
用件は「町会地内への緊急車両の侵入に係る要望」であった。

うちの町会は「こまちなみ」と呼ばれる旧城下町エリアである。
路地が細く入り組んでいるため、救急車はエリア内まで入ってこない。
救急車は町会地内を囲む広めの通りに停車して、救急隊員はそこから走って現場に向かう。そして、現場で患者を担架に載せて大通りの救急車まで運び、病院に搬送する。

ところが「担架で迎えに来るのでなくて、自宅前まで救急車に入って来てほしい」と、ある住民から要望が挙がった。「こういうことは個人で訴え出てもらちが明かないだろうから、町会からの要望として伝えてほしい」とのこと。

元民生委員さんは、長年地域のお世話役を一手に引き受けてこられた歴戦の猛者で、防災士の資格も持っておられる。わたしはその足元にも及ばぬ若輩者とはいえ、元民生委員さんにしろ、わたしにしろ、本件につきましてはうすう結論お察しなのだ。
それでもいいから、とにかく一緒に出張所に行って要望を伝えましょうということで、今般、連れ立って出かけた次第。行動に移すところに意義がある。

消防車は狭い路地でも入るけど、救急車は入れない

消防署からは「消防車は狭い路地でも入っていくけど、救急車は入れない」とのご回答。

迎えに行った後、向きを変えたり、狭隘な路地をゆっくり走って抜けなければいけないことを考えたら、大きい通りに救急車を止めて、人が走って担架で迎えに行った方が早いそうです。

ちなみに、消防車は引き返すときに時間がかかってもいいので、帰りのルートを心配せずにどんどん細い道に入っていくのだそうだ。火事を消すために現場に急行する必要はあるものの、火が消えたらそんなに急いで帰らなくてもいいからだ。
だが、救急車はそうはいかない。一刻も早く、かつ安全に患者を病院に運ばねばならない。搬送にかかる時間を少しでも短くする必要がある。

そうですよねえ。
わたしも元民生委員さんも、予想どおりのご回答。
それは要望を挙げた人にとっても同じかもしれない。

『苦情』ではなく『要望』で

「何で来てくれないの?」というモヤモヤの根っこ

ただ、搬送される家族を見守る身としては、雪や雨が降る中、ストレッチャーに載せられて運ばれる病人がかわいそうという気持ちがどうしてもあるようだ。
「消防車は入ってきてくれるのに、なんで救急車はここまで来てくれないの?」というモヤモヤもあるらしい。
その気持ち、わかるなあ。

話によると、今回の要望を挙げたご主人は、お母上がご存命中、心臓の持病で何度か救急車を呼んだことがある。
一度だけ、どうしてもとお願いして自宅まで迎えに来てもらった。
わたしは恐らくそのときの救急車が町会地内を通過するのを見た。

赤いランプを光らせて、静か~~~に、ゆ~~~~~~~っくり走ってた。
歩いた方が早いぐらいの速度であった。

住民のきもちはどうあれ、わが町会のほとんどのエリアでは、そうならざるを得ないのが救急車なのだ。

言葉にしただけで、遠い未来の約束は半分叶ったようなもの

対応してくださった消防署の人は、まだ40代ぐらいのお若い男性で、はきはきと丁寧に説明をしてくれた。十分なご対応を心からありがとうございます。

わたしからのお返事は、
「住民はだんだん年を取り、健康に不安がある方が多いです。要望に耳傾けていただいて、きちんとご説明いただいたことで、きっと不安が和らぐでしょう。このお話は当方からお伝えします」

住民からの要望は、親身に受け止め耳傾けて、真正面から向き合ったなら、それだけで半分叶ったようなもの。
ダイレクトにお願いごとをかなえて差し上げることはできないけれど、これだけ親切にご説明いただけたのだから、きっと前よりご納得してお過ごしいただけることでしょう。

今回は、わたしと元民生委員さんから、今のご説明を町会の皆さんにお伝えします。
コロナが落ち着いたら、町会で防災イベントを開催します。3年に1度ぐらいは消防署からも来てほしい。隊員さんじきじきに今のようなご説明を聞けたら住民はきっと安心できて喜びます。
どさくさに紛れて、そんな要望も追加でお伝えしておいた。

このコロナ禍の状況は、いつ終わるのか。
ほんのちょっと前までわたしたちが辟易しながらも営々とつなぎ続けたわが町会の日常は、恐らく帰ってこないだろう。
たとえ町会イベントができる程度に持ち直しても、そのころにはきっとこの隊員さんは異動になってるし、わたしは町会長をやっていないだろう。
それでもいい。こうして言葉にしただけで、遠い未来の約束は半分叶ったようなもの。

この記事は、(株)きもちとしくみ主筆 前野芽理が書いています。 コラム、販促記事などの執筆のほか、司会業、セミナー支援も承ります。

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