吾輩は底辺営業マンである。貯金はまだない。

吾輩は底辺営業マンである。貯金はまだない。

何故、今の職場で働いてるか頓(とん)と見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした職場を転々としてニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
吾輩はここで始めて人間というものをマトモに見た。

しかもあとで聞くとそれは資産家という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族だそうだ。
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。

彼らと話しているうちに、この者たちが幾つかの発想の癖がある時がついた。雑談のときですら、会計的な捉え方、質問をするのである。
資産家という種族の生まれの者は『会計』というものを不思議と幼少期からするものが多いかもしれぬ。

彼らはまず、何時までに、何をなすか?ということを明確にしたがる。
闇雲に努力をしたり、曖昧にいつか夢が叶うであろうという考えは持たぬのかもしれる。
条理が明晰で秩序が整然として立派な物を愛すのだ。
吾輩は何も考えずにボンヤリと物事をはじめたり、如何様に終わりに至るか考えぬものだから彼らの質問の仕方には閉口した。

だが彼らは悪意があったわけでなかろう。
すこぶる興味があったのか何度もDMを飛ばしてくる者もいる。
資産家とは暇な種族なのだろうか。吾輩にはわからぬ。

彼らは吾輩の法螺話におおいに感心をもつと、「そんなら君は何ものだい?」と私といふ者に興味をもち、現状把握をしたがる。
「僕か、そうさな僕なんかは――まあ折り紙で作った風車みたいなものだろう。カラカラと景気よく回ってはいるが何も生み出さぬ。足だけは軽くよく回る、それだけさ」
「君は始終泰然として気楽なようだが、羨しいな」

取るに足らぬつまらぬ話から、器用に吾輩の現状を彼らは悟っていくから大したものである。

「君の説は面白いが、現状のままでは上手くいくまい」ーお節介なのか、面白半分なのか色々と提案してくくれる。
最初こそ、「こりゃどうもです」と適当に流していたが、彼らと話をしていくと概ね、三つの視野で解決策を持ってきてなかなか面白い生き物だと思うようになった。

ひとつは、自分の足元を見給え、財布の中を改め給えといふ。
案外、人間というものは自分の持っている資産・才能をしらぬものらしい。
自らが知らぬ宝の山を探し、問題解決に当てろという算段なのだろう。

ふたつめは、ちょっとだけ遠くを見て景気の良いものを探して借り入れるなり、援助してもらえと抜かす。
「馬鹿を云え。カネを貸す者、カネを出す者などいるものか」というとそうでもないらしい。
期日・目的などが明確で面白い話なれば、カネを貸す銀行、援助をする自治体など奇特なものがいるらしい。

みっつめは、少し胆力がいるが体裁だけ整えて,万事順調でございますとハッタリをかませと声を潜めて囁く。
「なぁに、必要な時に充分なものだけあると思えば、誰も咎めませんよ。」
「人間といふものは納得すれば、現実にあるかどうかは実はあまり関係ないのですよ。真実を知りたいのでなく、安心したいだけなのです」
彼らをお上品な連中と思ったが意外と神経が太くて驚いた。

彼らの話を聞いて改めて思うだが、やはり会計的な発想で常に考えてるように思えてならぬ
(1)最終的な期日・達成目標を明確にする
(2)現状を把握する
(3)目標と現状の差分を如実にし、3つのアプローチで解決しようとする
 -a、内なる資源、即ち、自らの資産の中で必要なものを探し出す。
 -b、外なる資源、即ち、外部から借りるなり、出資してもらう。
 -c、相手の錯覚、即ち、無き物が有るが如く取り繕う。

面白きことは、期日の瞬間にだけ、目標を達成してると認めて貰えば良いと云う風情に見える。

『必要な時に必要なだけあればよいから、正月から大晦日まで身の丈にあまるほどの物事・財産を抱えてなくてよろしい。』
むしろ、常に過分に物をもつと腰が重くなって疲れやすくなります。そのうえ要らぬ心配事が増えて頭の巡りが悪くなるからいけません、と本気だか嘘だか分らぬことを抜かしてカラカラと笑う。

いずれにしても必要なだけ探すなり、借りるなり、出資してもらうなり、在るように振る舞って間に合ってしまえば良いと言う塩梅だ。

人の世は不思議なもので、様々な仕組みがあるらしい。
彼らは会計とやらで世間をみてるようだが、案外、このような考えが学問・技芸の道、喧嘩・色恋沙汰で役立つかもしれぬ。
人生は地図なき道を歩き、常に足らぬ至らぬ身で切り抜くものなのは変わりなかろう。

それでも、果たして吾輩に益するものがあるかは知らぬが、面白き話はどこからともなくひゅぅとやってきて、ひゅうときえていく。
それをnone of my business(夜に影を探すようなもの)と言うかどうかは自分次第かもしれぬ。

その奇妙な縁を味わい、翻弄されるのも人生の味わいというものであろう。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。ありがたい、ありがたい。

_(:3 」∠ )_

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等はデタラメの作り話であり、実在のものとは関係ありません。)

Twitterまとめ職人と呼ばれてしまいます。興味のままに突き進んでしまいます。_(:3 」∠ )_

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